伊那市への移住を考える方から、「都会を離れて田舎でのんびり暮らしたい」という言葉を聞くことがあります。
でも、実際に伊那で暮らす人たちと接する中で、この「田舎」「のんびり」という言葉を使う時、気を配った方がいい場面があります。
なぜなら、自分たちは、「田舎」いると思っていないし、「のんびり」しているとも感じていません。
そんな中で、「田舎はいいですね」「土地が安くて羨ましい」といった言葉が、思いがけず相手の気持ちに引っかかることがあります。
たとえば、伊那周辺の土地価格は、坪5万円ほどから。飯田なら11万円ぐらいから、松本だと30万円を超える場所もありますが、坪100万円あるいは300万円を超えるような都市部と比べれば、相対的に見て「安い」のは事実です。
でも、私たちにとってはそれが「普通の感覚」。そこに「安いですね」と言われると、どこか他人事のように感じて、ちょっとモヤっとしてしまうこともあります。
正直に言えば、私たちのように建築を生業とする立場からすると、「土地が安い」という言葉には歓迎する気持ちもあります。
なぜかというと、「じゃあ、そのぶん建物にしっかり予算を見てくれるかな?」という、期待も・・・(笑)。
実際、伊那は必要なものはちゃんと揃っているし、むしろ無駄なものが少ない。
この土地に暮らしていると、足りないと思うものよりも、「これでちょうどいい」と思えることのほうが多いんです。
ところで、伊那市の地域おこし協力隊の方々が「いなかもん(伊那 Come on)」というキャッチフレーズを使っていらっしゃいます。
うまい言葉だなぁ、と正直思います。伊那に「Come on」と呼びかける語呂のセンスと、「いなかもん」という響きをあえてポジティブに使おうとするユーモア。
そのアイデアは、おそらく地元の人というより、外部から来た方が考えたコピーだと思います。違っていたらごめんなさい。
少なくとも、100%悪気はない。それは、ぼくにはよくわかります。
むしろ、外から来たからこそ見える面白さや、地域を元気にしようという気持ちが、あのコピーに込められている気がします。
でも“愛”はあるのかな?あったらいいな。
だからこそ、言葉はむずかしい。どこかで誰かを傷つけてしまうこともあるけれど、意図や背景に思いをはせてみると、違う見え方になることもあります。
新しい土地で気持ちよく暮らすためには、「都会に比べてどうか」で測るのではなく、「この場所が自分にとってどう感じられるか」を大事にしてみると、いいスタートになるはず。
そして何より大切なのは、「ここが好き」と言える気持ち。人は、評価されるより、共感されるほうがうれしいものですから。
移住をお考えの方には、時々こんなお話もしています。
移住成功の鍵は、“人”とのコミュニケーションがうまくできるかも、最も重要なポイントです。
そういう場づくりも、小さい会社ながらやっているので、もしこちらに来ることがあったら、気軽に連絡もらえたらうれしいです。
秋山 悟