北欧デザインの照明器具

「ジャガイモやブドウはそのまま食べられるし、天井から裸電球をぶら下げれば光は得られる。でもそれで満足できるなら、あなたはかなり鈍感だ。」
ポール・ヘニングセンという北欧の照明デザイナーが、こんなふうに語っていたそうです。
大阪出張の隙間時間(仕事時間中に!!)に、“北欧のあかり展”の最終日に足を運びました。
冒頭のポール・へニングセン、アルバ・アアルト、コーア・クリント、アルネ・ヤコブセン、そしてハンス・ウェグナーなどなど。北欧家具かじりの僕は、ずらりと並ぶ名作の中に立ち、ハイセンスな空間の一部に自分も溶け込んだようで、とても心地よい時間でした。
そこで見つけたのが、この言葉です。「あなたは鈍感だ!」
この名言の前段には、PH5という名作ランプが、電球の光をいかにしてやわらかく心地よい「あかり」に変えているかという解説が添えられていました。言葉だけを切り取れば、少しきつく聞こえますが、長年試行錯誤を続けた巨匠の言葉として読むと、皮肉の効いた名言に感じられます。

右端がPH5
北欧の名作照明のほとんどが1900年代にデザインされたもので、当時は、LEDではなく、電球でした。LEDの光は、出た当初は目に刺さるような強い白色光でしたが、電球色のような暖色が選べるようになったり、拡散レンズや光の反射構造が使われ、だんだん優しいものに変わってきました。また、展示されていた照明器具のほとんどは、光をシェードに反射させています。直接LEDの光が目に入らないので、さらに優しいあかりを届けてくれました。
照明は単に「見える」ためだけでなく、空間の雰囲気や心の豊かさにもつながる存在。必要最低限を満たすだけでは、満足しきれないのが私たちの感性なのかもしれません。
この感覚は、住まいにも通じると思うのです。
屋根と水回りが整い、断熱と気密がしっかりしていれば、快適に暮らすことはできます。でも、そこにこういう“あかり”や、遊び心があると、暮らしはぐっと豊かになるのではないでしょうか。

名作とされる照明の中には、ペンダントライト一つで10万円を超えるものはざらです。繊細に作りこまれた美しいデザイン。とても高いですが、惹かれます。ただ、そうした製品は10年、20年経っても価値が落ちにくいのです。時には購入時より高く取引されることもあります。
一方で、IKEAやMUJIには、名作を彷彿とさせる手頃で雰囲気の良い製品もあります。 消耗品と割り切って手軽に楽しむのも良し。長く大切に使うことを前提に、名作に投資するのも良しです。それに、すべてを名作でそろえるなんて金銭的に現実的ではありません。巨匠にあんなふうに言われると、むしろ量産品と裸電球!を組み合わせるのも面白いかも、と思ったりもします。
